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自治体窓口の現状と課題──なぜ“待ち時間”が問題なのか
自治体窓口は、住民にとって欠かせない行政サービスの提供拠点です。しかし、平日の日中に集中する来庁や、書類手続きの煩雑さなどが重なり、常に「混雑」と「長時間の待ち時間」が課題とされてきました。特に戸籍課や保険年金課のような生活に直結する窓口では、来庁者が集中する曜日や時間帯が顕著であり、窓口職員への問い合わせ対応の負荷も非常に高い状況にあります。
実際に、M区役所やI区役所では、混雑状況に関する問い合わせが絶えないという背景がありました。従来は、区のホームページで混雑予想カレンダーを掲載するなどの工夫が見られましたが、天候や急な需要の変化により、実際の混雑と予測の間に乖離が生じるケースが多く、現場での対応力に限界がありました。
また、新型コロナウイルス感染症の流行以降、「密の回避」や「非接触対応」といった課題が急浮上しました。庁舎内で来庁者が長時間滞留することへのリスクが増したことで、待合スペースの利用方法や導線設計の見直しも進められています。このような背景の中、待ち時間の見える化や、来庁者の分散を促す仕組みが、自治体にとっての重要課題として位置づけられるようになりました。
さらに、高齢者やITに不慣れな方々に配慮した運用も不可欠です。紙の番号札だけで対応する従来型の窓口では、情報提供のタイミングが限られ、職員のマンパワーに頼る部分が多く残っていました。こうした状況において、デジタルとアナログを組み合わせた受付・発券システムの導入が注目されるようになっています。
発券機の進化がもたらすDX──クラウド連携のメリットとは
従来の番号札発券機は、窓口で順番を整理するためのシンプルなツールとして、多くの自治体に導入されてきました。しかし近年では、発券機自体がDX(デジタルトランスフォーメーション)の中核として再定義されつつあります。その背景には、クラウド型受付システムとの連携が可能となったことで、番号札の管理にとどまらない多機能化が進んでいる点が挙げられます。
たとえば、当社の「ネコの目クラウド受付システム」では、来庁者の発券から呼出、対応完了に至るまでの流れをすべてWeb上で一元管理できます。従来の発券機の機能に加え、タブレット端末やモニタを活用して、受付・呼出操作を非接触かつ柔軟に運用できる点が評価されています。これにより、職員の対応負担を軽減しつつ、利用者の待ち時間体験を向上させることが可能になります。
また、番号札に付与されるQRコードを利用して、スマートフォンから現在の呼出状況や待ち人数をリアルタイムで確認できるようになります。来庁者は庁舎内でじっと待つ必要がなくなり、時間の有効活用が実現できます。さらに、LINE通知やメール通知といった機能もクラウドならではの特長であり、呼出のタイミングで自動的に通知を行うことで、呼出漏れや不在の減少にもつながります。
このように、クラウドと発券機の連携によって生まれる利便性は、単に「待たせない」だけでなく、自治体職員の業務効率化や、窓口の人的リソース最適化にも寄与しています。端末はWi-Fi対応で、既存の庁舎設備への追加導入もしやすい設計となっており、自治体ごとの運用状況に応じた柔軟な展開が可能です。
実際の導入事例に学ぶ!M区役所・I区役所の成功ポイント
実際に「ネコの目」システムを導入し、顕著な成果を上げているのが、M区役所とI区役所の窓口部門です。両自治体とも、待ち時間の可視化と窓口業務の効率化を目指して発券機受付システムを連携導入しました。これらの事例は、番号札発券機をDXの起点とする上で非常に参考になります。
まずM区役所では、戸籍課および保険年金課において、常に発生する混雑の緩和を目的に導入が進められました。以前は窓口混雑予想カレンダーをWebに掲載していたものの、天候などの外的要因で来庁状況が変動し、現実とのズレが大きいという課題を抱えていました。そこで、リアルタイムの混雑状況をWeb配信する「ネコの目」システムを導入。これにより、来庁者自身が混雑を確認し、時間を選んで訪れる行動が促進されました。
一方、I区役所では、戸籍課における発券機の更新をきっかけに「ネコの目」の導入が検討されました。同区では、感染症対策の一環として混雑の「見える化」が強く求められており、LINE通知やWeb呼出サービスによる非接触化が大きな決め手となりました。また、発券機との連携によって、受付~呼出~対応完了の全工程がクラウドで管理可能になり、職員側の対応もスムーズになった点が高く評価されています。
さらに両自治体では、閲覧数や来庁傾向のデータを集計・分析することで、実施中の取り組みの改善にも活かしています。例えばI区役所では、12時台に来庁者が少ないにも関わらず、最大待ち時間が発生する傾向を可視化でき、混雑緩和の施策を再設計する材料となりました。
このように、単なる発券システムの刷新にとどまらず、「ネコの目」システムを活用することで、自治体はDXの実装を現場から具体的に進めることが可能となっています。
自治体の選択肢を広げる「ネコの目」──柔軟な連携と運用性
「ネコの目」システムの大きな強みは、既存設備を活かしながらクラウド連携を実現できる柔軟性にあります。従来の番号札発券機を買い替えることなく、インターネット接続機能を追加するだけで、「ネコの目.com」などの情報配信サービスとの連携が可能となり、コストを抑えつつ、DX推進が図れるのです。
特に自治体においては、異なるメーカーの発券機が併存しているケースも少なくありません。そのような環境でも「ネコの目」は柔軟に対応でき、窓口の受付業務全体をクラウドで統合管理できる点が大きな評価を得ています。タッチパネルによる受付、呼出操作タブレット、Wi-Fi接続の表示モニタなど、自治体側で保有している既存機器もそのまま活用できる設計となっており、導入障壁が低いのも特徴です。
また、「ネコの目」には、情報提供の場としての役割を担う「お知らせ機能」が搭載されています。来庁者が待ち時間をスマートフォンなどで確認する際、同じ画面上に役所からの重要なお知らせや注意事項を表示することができるため、広報や周知活動にも効果的です。たとえば「この日は混雑が予想されます」「持参書類の確認をお願いします」といった案内をタイムリーに届けることで、窓口業務の円滑化と住民の利便性向上を同時に実現できます。
さらに、今後はLINE連携やバリアフリー対応、多言語対応といった拡張も計画されており、地域の多様なニーズに寄り添った運用が可能です。柔軟なカスタマイズ性を備えているからこそ、規模や体制が異なる自治体でも、それぞれに合った活用が実現できるのです。
「ネコの目」は単なる発券システムにとどまらず、庁舎内の情報基盤としての進化を続けています。こうした拡張性と運用の自由度が、自治体にとって極めて有用な選択肢であることは間違いありません。
混雑緩和だけじゃない!住民サービス向上への波及効果
番号札発券機とクラウド受付システムの連携は、単なる「混雑対策」にとどまらない多面的な効果をもたらします。住民の利便性を高めることはもちろん、自治体全体のサービス品質や信頼性向上にも直結する取り組みとして注目されています。
たとえば「ネコの目」導入後、M区役所では待ち時間の短縮と問い合わせ数の激減が実現されました。来庁者が事前に混雑状況を把握し、空いている時間帯を狙って来庁する行動変容が起きたことで、窓口業務の平準化にもつながったのです。また、LINEやメールでの呼出通知機能により、呼出漏れや長時間の滞在が減少し、庁舎内の「密」を回避する新しい受付スタイルが実現しました。
I区役所では、来庁者の行動パターンをデータ分析により把握し、業務の最適化に成功しています。特定の時間帯に来庁が集中する傾向が明確になったことで、職員のシフト調整や窓口配置を柔軟に見直すことが可能となり、人的リソースの効率的な活用にもつながりました。
また、高齢者やITに不慣れな方への対応力も向上しています。「ネコの目」は紙の番号札による従来の運用も残しつつ、スマホやタブレットを活用できる来庁者には、より便利な機能を提供する設計となっており、すべての住民が利用しやすい環境を実現しています。
このように、番号札発券機とクラウドシステムの融合は、自治体窓口の「待たせない」「迷わせない」「漏らさない」を実現するための重要な要素となっています。そしてそれは、住民からの信頼獲得と、職員の働き方改革という両面において、大きな価値を生み出しているのです。
まとめ
番号札発券機とクラウド受付システムの融合は、自治体窓口のあり方そのものを進化させる取り組みです。従来のように長時間並ぶ、混雑を我慢するといった光景は、もはや過去のものとなりつつあります。「ネコの目」システムの導入により、混雑状況のリアルタイム配信や呼出通知、そして役所からのお知らせ発信など、多機能かつ実用的な仕組みが実装され、住民と職員の双方にとっての快適な窓口環境が実現されています。
導入事例に見られるように、単なる機器の置き換えではなく、デジタル化を通じた業務改革として成果を上げている自治体は少なくありません。とりわけ、「見える化」と「通知」による来庁者の行動変容は、自治体サービスの質の底上げにも大きく寄与しています。
今後は、LINE連携や多言語対応といった機能拡張も進み、多様な住民ニーズに応える窓口DXの加速が期待されます。発券機の進化とともに、自治体のデジタル施策もまた、新たなステージへと進んでいくことでしょう。